夢源樹の店主から、無理矢理引きずり込まれた執筆者が、蔵の闇に散らばった言の葉を拾い集めて紡いだコラム。
2010.08.01 Sun.
この世はすべてひっくり返っている。こういうと、何をバカなことを、といわれそ
うだが、ヒトの眼底には天地が逆転した光景が映っている。それを脳が無理矢理、情
報処理を行って、今、こうして見える位置に調整していることは、医学的な事実であ
る。
反対に、天地が逆に見える特殊なメガネを掛けつづけると、やがて通常の位置に見
えるようになるという。
同様に、世の中もまた、常識が逆転していることはままあるもの。建前と本音が逆
というケースは、それこそよくある話だ。しばしば真実は世間が思っていることと
は、まるっきり逆になっているものである。
宇宙の真理、神の叡智であるカッバーラもまた、しかり。カッバーラの奥義を象徴
する生命の樹は、ちょうど表裏が反対になっている。通常、描かれる生命の樹は後ろ
を向いた格好になっているのである。
2次元の平面に描かれた生命の樹を正面向きにさせる場合、鏡を使うといい。鏡に
映った姿が本来の生命の樹なのである。これを鏡像反転と呼ぶ。
カッバーラでは、これを暗示するために、生命の樹は上下逆さまに生えていると説
明することもある。
先述したように、カッバーラはユダヤ教の中だけに収まるものではないことを示す
例として、インドの生命の樹であるアシュバッタもまた、天地が逆さまに生えている
といわれている。
もちろん、逆さまの生命の樹という概念は日本の神道にもある。神道では神の御魂
が宿る樹のことを榊という。サカキとは、神聖なる空間を仕切る境木とも、叡智を意
味する賢木とも書かれるが、もうひとつ上下逆さまを意味する逆木でもあるのだ。そ
れゆえ、神社の本殿には鏡が祀られ、しばしば榊に吊るすのである。

三神たける
MIKAMI Takeru
某商業誌に超常現象系のコラムを寄稿する謎のライター。
‘70年代の多感な時期を、ユリゲラーやUFOと共に過ごす。
生年、性別不明。
